RPAとは?DX推進の鍵となる自動化ツールの基本を徹底解説

  • URLをコピーしました!

「DXを進めたいが何から手をつければいいかわからない」と悩むビジネスパーソンは少なくありません。本記事では、そんなDX推進の鍵となるRPAの基本を徹底解説。RPAの全体像からAIとの違い、具体的なメリットまでを網羅し、導入への不安を解消して業務効率化への第一歩を踏み出す自信を育みます。

目次

RPAとは?DX推進に欠かせない業務自動化の基本

まず「RPAとは何か」という最も基本的な問いに、分かりやすくお答えします。RPAは単なる業務効率化ツールではなく、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる上で、極めて重要な役割を担う存在です。

RPAはパソコン業務を代行してくれる「ソフトウェアロボット」

RPAとは、「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略称です。 少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「これまで人間がパソコンで行ってきた定型的な事務作業を、代行してくれるソフトウェア上のロボット」のことです。人の代わりに働くデジタルな労働力という意味で、「デジタルレイバー(Digital Labor)」と呼ばれることもあります。

具体的には、以下のような作業を自動化できます。

  • Excelへのデータ入力や転記
  • 複数のシステムからの情報収集と集計
  • メールの自動作成・送信
  • 請求書や報告書の作成

これらの作業を、設定されたルール(シナリオ)に従って、24時間365日、ミスなく高速に実行してくれるのがRPAの正体です。

なぜDXの第一歩にRPAが最適なのか?

多くの企業がDXの重要性を認識しつつも、「何から始めるべきか」「推進するための人材がいない」といった課題に直面しています。 DXの本来の目的は、デジタル技術を用いてビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を創造することです。しかし、そのためには従業員が日々のルーティンワークから解放され、より創造的で付加価値の高い業務に集中できる環境が不可欠です。

そこでRPAは、DX推進における強力な第一歩となります。まず足元にある定型業務をRPAで自動化し、従業員の「時間」という最も貴重なリソースを生み出す。そして、その時間をDX推進のための企画、分析、顧客との対話といった本来人間がやるべき業務に再投資する。

このように、RPAはDXを実現するための土台作りとして、非常に効果的かつ導入しやすいソリューションなのです。

RPAが命令を理解し、業務を自動で実行する仕組み

RPAは、プログラミングのように複雑なコードを書かなくても、比較的簡単にロボットを作成できる点が大きな特長です。その基本的な仕組みは、主に以下の3ステップで成り立っています。

1.記録(レコーディング)

人間がパソコン画面上で行う操作(マウスのクリック、キーボードからの文字入力、ファイルのコピー&ペーストなど)を、RPAツールが一つひとつ記録します。

2.手順書化(シナリオ作成)

記録した操作を基に、RPAが実行すべき作業手順書(「シナリオ」や「ワークフロー」と呼ばれます)を作成・編集します。

3.実行ラン

作成したシナリオ通りに、RPAロボットが人間の代わりに作業を高速かつ正確に実行します。

RPAツールは、画面上のボタンの位置や画像、テキストといった要素を認識して動作するため、複数の異なるアプリケーションをまたいだ一連の作業も自動化できるのです

役割の違いが明確になる!RPA・AI・VBA(マクロ)の比較

RPAの話をすると、必ずと言っていいほど「AIやExcelのマクロ(VBA)と何が違うの?」という疑問が出てきます。これらは似ているようで、その役割は全く異なります。ここでは、それぞれの違いを明確に解説します。

【比較表】RPA・AI・VBA(マクロ)の違いが一目でわかる

まずは、三者の違いを一覧表で確認してみましょう。

項目RPAAI(人工知能)VBA(マクロ)
主な目的定型業務の自動化・実行データに基づく分析・予測・判断MS Office製品内の作業の自動化
判断能力×(ルールベースで動作)◎(自ら学習し判断)×(ルールベースで動作)
作業範囲アプリケーションを横断データ解析・画像認識などMS Office製品内に限定
得意なこと決められた手順の正確な反復非構造化データの認識・需要予測Excelの計算・レポート作成
専門知識比較的少ない知識で利用可能高度な専門知識が必要ある程度のプログラミング知識が必要

AIとの違い【RPAは「指示通りに実行する手足」、AIは「自ら考える頭脳」】

RPAとAIの最も大きな違いは、「自ら判断できるか否か」です。

RPA
あらかじめ決められたルール(指示)通りに作業を忠実に実行する「手足」のような存在です。イレギュラーな事態や、ルールにない判断はできません。

AI
大量のデータからパターンを学習し、未知のデータに対しても自ら予測・判断を下す「頭脳」のような存在です。

例えるなら、請求書に書かれた文字を読み取ってシステムに入力する際、RPAは「この枠の文字を、この入力欄に転記する」という作業は得意ですが、手書きの崩れた文字を読み取ることは困難です。一方、AI(特にAI-OCR)は、様々な手書き文字のパターンを学習することで、高い精度で文字を認識・データ化できます。

近年では、AIとRPAを連携させ、AIが判断した結果をRPAが実行する、といった高度な自動化も進んでいます。

VBA(マクロ)との違い【RPAは「アプリケーションを横断」、VBAは「特定のソフト内」で活躍】

VBA(Visual Basic for Applications)は、主にExcelやAccessといったMicrosoft Office製品内の作業を自動化するためのプログラミング言語です。

VBA(マクロ)
Excel内でのデータ集計やグラフ作成、Wordでの定型文作成など、特定のアプリケーション内で完結する作業を得意とします。例えるなら「Excelという家の中で働く有能な執事」です。

RPA
Excelでデータを集計した後、その結果をWeb上の基幹システムにログインして入力し、完了報告メールをOutlookで送信する、といった複数のアプリケーションを横断した一連の作業を自動化できます。まさに「様々な家(アプリ)を自由に行き来できる配達員」と言えるでしょう。

すでにVBAで業務を効率化している場合でも、その前後の作業を含めてRPAで自動化することで、さらなる効果が期待できます。

RPAで実現できることとは?部門別の活用事例と自動化が苦手な業務

「RPAとは何か、その理屈はわかったけれど、具体的にどんな業務に使えるの?」という疑問にお答えします。ここでは、読者の皆様がイメージしやすいよう、部門別の活用事例と、RPAが苦手な業務について解説します。

【経理・財務部門】請求書処理や経費精算の自動化事例

経理・財務部門は、月次・年次の定型業務が多いため、RPAとの相性が非常に良い部門です。

  • 請求書処理:取引先からメールで送られてくる請求書PDFをRPAが自動でフォルダに保存。内容を読み取り(OCR連携)、会計システムに転記。処理が完了したら、その旨を担当者に通知する。
  • 経費精算:申請された交通費が、経路検索システム上の最短・最安ルートと一致しているかをRPAが自動でチェック。不備があれば申請者に差し戻しメールを送信する。
  • 売掛金・買掛金管理:入金データを基幹システムからダウンロードし、売掛金の消込作業を自動化。支払い期日が迫った買掛金リストを自動で作成する。

【人事・総務部門】勤怠管理や入退社手続きの自動化事例

人事・総務部門でも、各種手続きやデータ管理業務でRPAが活躍します。

  • 勤怠管理:勤怠管理システムから全従業員の労働時間データを抽出し、月の残業時間が規定を超えている従業員のリストを作成。上長と本人にアラートメールを自動送信する。
  • 入退社手続き:新入社員の情報を人事DBから取得し、PCアカウント、各種システムのアカウント発行申請などをRPAが代行。退職者のアカウント削除も同様に自動化できる。
  • 各種証明書発行:従業員からの依頼に基づき、在職証明書や源泉徴収票といった定型的な書類をRPAが自動で作成・印刷する。

【営業・マーケティング部門】顧客リスト作成やレポート業務の自動化事例

営業やマーケティング部門では、情報収集やレポーティングといった作業の自動化で効果を発揮します。

  • 見込み顧客リスト作成:特定の業界や地域の企業情報を掲載しているWebサイトをRPAが巡回(スクレイピング)し、社名、住所、連絡先などをリスト化する。
    ※Webサイトからの情報収集(スクレイピング)を行う際は、必ず対象サイトの利用規約を確認し、著作権法、個人情報保護法、不正アクセス禁止法などを遵守する必要があります。 著作権者の許可なく情報を複製・利用する行為は著作権侵害に当たる可能性があり、利用規約に反するスクレイピング行為は契約違反や業務妨害罪に問われるリスクも伴います。特に個人情報を収集する際は、事前に本人の同意を得るか、個人情報保護法の定めに従って適切に匿名加工情報として取り扱うなど、細心の注意を払ってください。
  • 競合調査:競合他社のWebサイトやECサイトを定期的にチェックし、新製品の情報や価格変動を自動で収集・記録する。
  • 広告レポート作成:各Web広告媒体の管理画面にRPAが自動でログインし、日々のパフォーマンスデータをダウンロード。Excelのレポートに自動で転記・グラフ化する。

RPAが苦手なこと|人間の判断や創造性が必要な非定型業務

RPAは万能ではありません。導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、RPAが苦手とすることを正しく理解しておくことが重要です。 基本的に、RPAはルール化できない非定型な業務や、人間の判断・創造性が必要な業務は苦手です。

  • 毎回手順が変わる業務:お客様からの問い合わせメールの内容を読み解き、状況に応じて返信内容を変える。
  • 創造的な思考が必要な業務:新しいサービスの企画立案や、マーケティング戦略の策定。
  • 物理的な作業:書類の押印や、郵便物の封入・発送。
  • 頻繁なデザイン変更:Webサイトやシステムの画面デザインが頻繁に変わると、RPAがボタンの位置などを見つけられなくなり、エラーで停止する可能性があります。

RPAとは、あくまで「決められたルールを正確に実行する」ツール。どの業務を任せるべきか、見極めることが成功の鍵となります。

RPA導入のメリット・デメリット|費用対効果を最大化するポイント

RPA導入を具体的に検討する段階では、そのメリットだけでなく、デメリットやコストについても冷静に把握しておく必要があります。ここでは、導入を成功に導くためのポイントを解説します。

生産性向上だけじゃない!RPA導入で得られる5つの経営的メリット

RPA導入は、単なる業務効率化に留まらない、多くの経営的メリットをもたらします。

1.生産性の劇的な向上

ロボットは人間と違い、休憩も取らず24時間365日稼働できます。人間が行うよりも数倍のスピードで作業を遂行するため、企業全体の生産性が飛躍的に向上します。

2.コスト削減

定型業務をRPAに任せることで、その分の人件費や残業代を抑制できます。特に作業量が多い業務ほど、大きなコスト削減効果が見込めます。

3.品質向上とヒューマンエラーの撲滅

人間が作業すると、どんなに注意していても入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーは避けられません。RPAは指示通りに寸分違わず作業を行うため、業務品質が安定し、ミスの修正にかかる時間もなくなります

4.従業員満足度の向上

退屈な単純作業から解放された従業員は、より創造的で付加価値の高いコア業務に集中できるようになります。これは、仕事へのやりがいや満足度の向上に繋がり、離職率の低下も期待できます。

5.コンプライアンスとガバナンスの強化

RPAは「いつ」「誰が」「どのデータを」「どのように処理したか」という作業記録(ログ)を正確に残します。これにより業務プロセスが可視化され、内部統制やセキュリティの強化に貢献します。

導入前に知るべき3つのデメリットと「野良ロボット」化させない対策

一方で、RPA導入には注意すべきデメリットも存在します。対策とセットで理解しておきましょう。

1.導入・運用コストの発生

RPAツールのライセンス費用や、導入をサポートするベンダーへの支払いなど、初期費用・ランニングコストがかかります。自動化による削減効果がコストを上回るか、事前の費用対効果の試算が重要です。

2.業務停止のリスク

RPAが連携しているWebサイトやシステムの仕様変更、サーバーのメンテナンスなどが発生すると、ロボットがエラーを起こして停止する可能性があります。定期的なメンテナンスや、エラー発生時の対応ルールを決めておく必要があります

3.「野良ロボット」問題

各部署が管理部門の許可なく自由にロボットを作成・運用し始めると、統制が取れなくなり、誰も仕様を把握できない「野良ロボット」が乱立する危険性があります。これは、情報漏洩などの重大なセキュリティインシデントや、担当者の異動・退職によって誰もメンテナンスできなくなる業務プロセスのブラックボックス化に繋がる深刻な問題です。全社的な開発・運用ルールを定めることが不可欠です。

RPAツールの種類と費用感(デスクトップ型・サーバー型・クラウド型)

RPAツールは、提供形態によって大きく3つの種類に分けられます。自社の規模や目的に合ったツールを選ぶことが重要です。

デスクトップ型

個人のパソコンにインストールして利用するタイプ。比較的安価で、特定の個人の業務や小規模な自動化から始めたい場合に適しています。「スモールスタート」に最適です。従業員が少ない中小企業や、特定の部門での試験的な導入を検討しているケースに特におすすめです。

サーバー型(オンプレミス型)

自社のサーバーにRPAソフトウェアをインストールし、複数のロボットを集中管理するタイプ。大規模な自動化や、全社的なガバナンスを効かせたい場合に適しています。セキュリティは強固ですが、初期費用は高額になる傾向があります。セキュリティ要件が厳しく、多くの部署でRPAを展開したい大企業や、既存のITインフラを最大限活用したい企業に適しています。

クラウド型

ベンダーが提供するクラウドサーバー上でRPAを利用するタイプ。自社でサーバーを持つ必要がなく、初期費用を抑えて迅速に導入できます。場所を問わずに利用できる点もメリットです。初期投資を抑えたい企業や、短期間での導入を目指すスタートアップ企業、あるいはリモートワーク環境での利用が多い企業に適しています。

【失敗しない】RPA導入の進め方|3つのステップでDXを成功に導く

最後に、RPA導入を成功させるための具体的な進め方を、3つのステップに分けて解説します。難しく考えず、このステップに沿って進めることで、失敗のリスクを大きく減らすことができます。

Step1『業務の可視化と自動化対象の選定』

最初に行うべきは、「現状の業務をすべて洗い出すこと(業務の可視化)」です。誰が、どのような業務に、どれくらいの時間をかけているのかをリストアップします。 その中から、以下の特徴を持つ業務をRPA化の候補として選定します。

  • ルールが明確で、手順が決まっているか
  • 繰り返し発生する頻度が高いか
  • 判断が不要な単純作業か
  • デジタルデータ(Excel, CSV, Webなど)を扱うか

まずは、効果が出やすく、関係者の協力も得やすい業務を選ぶことが成功の秘訣です。

Step2『「スモールスタート」で効果を小さく、早く、確実に実感する』

いきなり全社的な大規模導入を目指すのは禁物です。まずは特定の部署の、特定の業務一つから始める「スモールスタート」を強く推奨します。 小さな成功体験を早期に作ることで、以下のようなメリットが生まれます。

  • 効果の可視化:「これだけ時間が削減できた」という具体的な成果を示せる。
  • ノウハウの蓄積:導入や運用に関する知見が社内に溜まる。
  • 心理的ハードルの低下:関係者がRPAへの理解を深め、協力的な姿勢になる。

この小さな成功体験が、次の展開への大きな推進力となります。

Step3『運用ルールの策定と全社展開への道筋』

スモールスタートで効果が確認できたら、本格的な運用と全社展開を見据えたルール作りを進めます。

  • 開発・管理体制:誰がロボットを作成し、誰が管理するのか?
  • 運用ルール:エラー発生時の連絡体制や、仕様変更時の対応フローはどうするか?
  • 効果測定:削減できた時間やコストをどのように測定し、評価するのか?

こうしたルールを定めることで、前述した「野良ロボット」化を防ぎ、安定的かつ効果的な運用が可能になります。そして、スモールスタートで得た知見や成功事例を社内で共有しながら、徐々に対象業務を拡大していくのが、RPA導入を成功に導く王道パターンです。

まとめ

本記事では、RPAとは何か、その基本から具体的な活用事例、導入のステップまでを網羅的に解説しました。

RPAは、単に面倒な作業を代行するだけのツールではありません。RPAを導入することは、従業員を単純作業から解放し、より創造的で付加価値の高い仕事に集中させるための戦略的な一手です。そして、そうして生まれた時間とエネルギーこそが、企業全体の生産性を向上させ、DXを成功に導く原動力となります。

あなたの部署にも、毎日繰り返されている「あの作業」はありませんか? この記事を参考に、ぜひ自社の業務効率化、そしてDX推進の力強い第一歩として、RPAの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

SNSフォローバナー

この記事が気に入ったらフォローしてね!

シェアはこちら
  • URLをコピーしました!
目次