
「せっかくの内見希望が入ったのに、スタッフが出払っていて案内できない…」 「営業時間外の問い合わせ対応が遅れ、翌朝連絡したら既に他社で決まっていた」
不動産実務の現場で、このような悔しい経験をしたことはありませんか? 人口減少による人手不足が深刻化する今、これまでの「人が鍵を持って現地へ走る」やり方には限界がきています。そこで今、業界で急速に導入が進んでいるのが「AI内見案内」です。
「AIなんて難しそう」「費用が高くて中小には無理」と思っていませんか? 実は、技術の進歩により、今では驚くほど簡単に、そして低コストで導入できるようになっています。
この記事では、AIやITに詳しくない初心者の方に向けて、AI内見案内の仕組みから、具体的なメリット、費用感までを、初心者の方にもわかりやすく解説します。 この記事を読み終える頃には、あなたの会社や物件でどのようにAIを活用すればよいか、明確なイメージが湧き、業務を劇的に効率化させる第一歩を踏み出せるはずです。
AI内見案内とは?不動産業務を変える仕組みと種類

まずは、「AI内見案内」とは具体的にどのようなものなのか、その基本から解説します。
AI内見案内の基本定義
これまでの内見は、お客様と日程を調整し、スタッフが鍵を持って現地へ向かい、解錠して立ち会うのが当たり前でした。しかし、AI内見案内はこの常識を覆します。
AI内見とは、「予約受付」「鍵の解錠」「物件説明」「内見後の追客」といった一連の流れを、AI(人工知能)とIoT機器(スマートロックなど)を使って自動化するシステムのことです。
具体的には、以下のような流れになります。
お客様がWebサイトから24時間いつでも内見予約。
システム上で本人確認書類をアップロード(AIが審査)。
当日、お客様のスマホに「一時的なデジタルキー」が届き、現地で解錠。
室内のスマートスピーカーやスマホ上のAIが、物件の魅力を音声で解説。
退室後、オートロックで施錠。AIからお礼と感想伺いのメールが自動送信される。
スタッフが現地に行かなくても、お客様だけで内見が完結する。これが最大の特徴です。
種類① 現地無人内見型(スマートロック活用)
現在、賃貸仲介や管理会社で最も導入が進んでいるのがこのタイプです。 物件の玄関に「スマートロック(スマホで開けられる鍵)」を設置します。お客様は一人で現地に向かい、誰にも気を使わずに部屋を見学できます。
室内にAIスピーカー(Amazon Echoなど)を置いておき、「キッチンの設備について教えて」と話しかけると、「こちらは最新の食洗機付きシステムキッチンです」とAIが答えてくれるサービスもあります。
種類② オンライン接客型(VR・アバター活用)
こちらは現地に行かず、自宅のパソコンやスマホから内見できるタイプです。 3Dカメラで撮影した室内の映像(VR)の中を、AIのアバター(キャラクター)が案内してくれます。
遠方からの転勤者や、「まずは雰囲気だけ知りたい」という初期検討層のお客様に対して、交通費や移動時間をかけずにアプローチできるのが強みです。
競合との違いは「連携」
ここで一つ、プロの視点をお伝えします。 AI内見案内で重要なのは、単に「鍵がスマホで開く」ことではありません。「予約システム」や「顧客管理システム(CRM)」と連携していることが最も重要です。
「誰が」「いつ」入室したかを記録し、その情報を元に「内見後30分以内に自動でお礼メールを送る」といった完全自動化ができてこそ、本当の意味での業務効率化が実現します。
AI内見案内を導入する3つのメリットと業務効率化効果

では、実際に導入すると現場にはどのような変化が起きるのでしょうか。大きなメリットは3つあります。
メリット1 24時間365日の受付・案内で機会損失を大幅に削減
不動産会社の定休日である水曜日や、営業時間外の早朝・深夜でも、AIなら文句ひとつ言わずに対応してくれます。
特に最近の若い世代(Z世代など)は、「思い立ったときにすぐ見たい」というニーズが非常に強いです。「電話がつながらないから別の会社にしよう」という機会損失を防ぎ、全てのチャンスを拾えるようになります。
メリット2 移動時間と人件費の大幅削減
片道30分の物件なら、往復1時間+案内時間30分で、1組あたり約1.5時間拘束されます。鍵の手配が複雑ならもっとかかるでしょう。 AI内見を導入すれば、この時間が「ゼロ」になります。
空いた時間で、営業スタッフは何をすべきか? それは、ただの案内係ではなく、宅建業法で定められた「重要事項説明」や「契約締結」といった専門業務、そして「本当に迷っているお客様へのクロージング(後押し)」といった、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中することです。法令順守(コンプライアンス)を徹底しつつ、結果として少ない人数でも高い売上を上げることが可能になります。
メリット3 成約率の向上とデータ分析
意外に思われるかもしれませんが、有人案内よりもAI内見の方が成約率が上がるケースがあります。 その大きな理由は、お客様が誰にも気兼ねせずリラックスして内見できる点にあります。
営業マンに見られていると、「収納の中まで見たら失礼かな」「早く帰らないと悪いな」と遠慮してしまいがちです。しかし無人であれば、生活動線を納得いくまで確認できるため、入居後のイメージが湧きやすく、結果的に申し込みに繋がりやすくなります。
また、AIはデータを収集します。「リビングには10分いたけど、浴室は1分しか見なかった」というデータを分析すれば、「このお客様は広さを重視しているから、別の広い物件も提案しよう」といった精度の高い追客が可能になります。
AI内見案内のデメリットと失敗しない対策

もちろん、良いことばかりではありません。導入前に知っておくべきリスクと、その対策についてもしっかり解説します。
セキュリティと防犯面の懸念
「誰もいない部屋にお客様を入れるなんて、部屋を荒らされたりしないか?」 これは誰もが抱く不安です。しかし、現在のシステムは非常に厳重に対策されています。
- 本人確認の厳格化
予約時に運転免許証や顔写真をアップロードさせ、AIと目視でチェックします。どこの誰かわからない人は予約できません。 - 入退室ログの管理
「いつ入っていつ出たか」が秒単位で記録されます。 - 室内カメラ
簡易的なネットワークカメラを設置し、万が一のトラブル時は映像を確認できるようにします。
※ただし、プライバシー保護のため、予約時に「防犯のため録画を行う」旨を必ず通知し、同意を得る仕組みが必要です。
また、取得した運転免許証などの個人情報は、個人情報保護法に基づき厳重に管理し、利用目的(内見時の本人確認など)をプライバシーポリシー等で明示しておくことも忘れてはいけません。
これらをオーナー様にしっかり説明し、「むしろ誰が入ったか記録に残らないキーボックスより安全です」と伝えることが大切です。
高齢者やIT不慣れな顧客への対応
スマホの操作が苦手なご高齢のお客様には、アプリでの解錠はハードルが高い場合があります。 ここで重要なのは、「すべてをAIにする必要はない」ということです。
ITに慣れている若年層はAI内見へ誘導し、ご高齢の方や、対面でじっくり相談したい方には従来通りスタッフが対応する。この「ハイブリッド運用」こそが、失敗しない導入のコツです。
AI内見案内の費用相場と導入までのステップ

「便利そうだけど、やっぱり高いのでは?」という疑問にお答えします。
初期費用とランニングコストの目安
料金体系はサービスによって異なりますが、目安としては以下の通りです。
- 初期費用
スマートロック代として、1戸あたり 数万円〜5万円程度。 - 月額費用
システム利用料として、1戸あたり 数百円〜数千円程度。
最近では、「初期費用0円、月額数千円」というサブスクリプション型のサービスも増えています。大規模なシステム改修は不要で、1部屋単位から契約できるサービスも多いため、まずは空室が埋まらない部屋から「お試し」で始めるのが賢いやり方です。
導入に必要な機材と準備
導入には主に以下の3つが必要です。
- スマートロック
既存の鍵の上から貼り付けるタイプなら、工事不要で原状回復も簡単です。 - 通信環境
多くのスマートロックはハブ(中継機)を通じてネットに繋がります。しかし、空室にはネット環境がないことが一般的です。そのため、Wi-Fi設置不要で直接通信できる「LTE通信機能内蔵型」のスマートロックを選ぶか、モバイルルーターがセットになったプランを選ぶのが現実的です。 - オーナー様の承諾
鍵の仕組みが変わるため、必ず事前に許可を取りましょう。「早く空室を埋めるための最新施策です」と伝えれば、協力してくれるオーナー様は多いはずです。
サービス選定のポイント
数あるサービスの中から選ぶ際は、「今使っている賃貸管理ソフトと連携できるか」を確認してください。 予約が入るたびに、手動で情報を打ち直していては本末転倒です。また、導入当初はトラブルも想定されるため、電話サポート窓口があるなど、サポート体制が充実している会社を選ぶことを強くおすすめします。
不動産AI内見の成功事例と未来の展望
【事例】スタッフ3名で管理戸数1.5倍を実現した会社
ある地方の不動産会社(スタッフ3名)の事例です。 以前は土日になると案内が重なり、電話対応に追われて残業も月40時間を超えていました。そこで、反響の多い人気物件と、逆に長期空室物件の2パターンに絞ってAI内見を導入。
その結果、案内の約4割を無人化することに成功。残業時間はほぼゼロになり、空いた時間でオーナー営業に回った結果、管理戸数を1.5倍に増やすことができました。 「AIに任せるところ」と「人がやるところ」を分けた成功例です。
これからの不動産仲介のあり方
最後に、これからの不動産業界についてお話しします。 AIは、私たちの仕事を奪う敵ではありません。面倒な作業を一手に引き受けてくれる「非常に心強いアシスタント」です。
AIができることはAIに任せ、私たち人間は、お客様の不安に寄り添ったり、ライフスタイルに合わせた提案をしたりと、「感情」や「信頼」に関わる部分に特化していく。これこそが、これからの時代に選ばれる不動産会社の姿です。
まとめ
AI内見案内は、単なるコスト削減ツールではありません。お客様に「自由な内見体験」を提供し、満足度を高めるための攻めのツールです。
- 24時間対応で機会損失を防ぐ
- 移動時間を削減し、コア業務に集中する
- データ分析で成約率を高める
いきなり全物件に導入する必要はありません。まずは、なかなか決まらない空室1部屋から、あるいは繁忙期限定で、AIの力を借りてみませんか? その小さな一歩が、御社のビジネスを大きく飛躍させるきっかけになるはずです。
まずは各社の資料を取り寄せ、自社に合いそうなプランがないか確認することから始めてみてください。
