
「Google Workspace Studio(グーグル・ワークスペース・スタジオ)」という言葉をニュースや社内で耳にして、「難しそう」「エンジニア向けのツールでは?」と不安に思っていませんか?
実はこれ、特別なITスキルがなくても、日本語で指示するだけで自分専用の業務アシスタント(AIエージェント)を作れる画期的な機能です。「プログラミングは一切できない」という方にこそ、使っていただきたいツールなのです。
この記事では、ITに詳しくない初心者の方に向けて、Google Workspace Studioの基本的な仕組みから、明日から使える具体的な作り方、導入にかかる費用までを網羅的に解説します。専門用語も噛み砕いて説明するのでご安心ください。
最後まで読めば、「自分にもできる!」という確信が持てるだけでなく、メール返信や日程調整といった毎日の単純作業を自動化し、本来注力すべき業務に集中するための具体的な第一歩が踏み出せるようになります。
Google Workspace Studioとは?ノーコードでAIエージェントを作る仕組み

まずは、「Google Workspace Studio」が一体何なのか、その正体を初心者の方にも分かるように紐解いていきましょう。一言で言えば、「言葉で指示するだけで、あなたの代わりに仕事をしてくれる『AIエージェント』を作れる工場」です。
プログラミング不要!自然言語で「AIエージェント」を作るツール
これまで、業務を自動化するシステムを作るには、エンジニアが複雑なプログラムコード(呪文のような文字列)を書く必要がありました。しかし、Google Workspace Studioは違います。
必要なのは「自然言語(日本語)」だけです。
「毎日届く請求書メールを読み取って、金額をスプレッドシートにまとめて」
「会議が終わったら、録画データから議事録を作って関係者に送って」
このように、やりたいことをチャットで話しかけるように入力するだけで、GoogleのAI(Gemini)があなたの意図を理解し、裏側で必要なシステムを自動的に構築してくれます。これを「ノーコード(コードを書かない)」開発と呼びます。
出来上がるのは、単なるプログラムではなく、あなたの指示通りに動く「AIエージェント(自分の分身ロボット)」です。このエージェントが、あなたの代わりに24時間365日、文句も言わずに定型業務をこなし続けてくれるのです。
Gemini(チャットボット)やLooker Studioとの違いを解説
Googleには似たような名前のツールがいくつかあり、混乱しやすいポイントです。ここで明確に区別しておきましょう。
Gemini(ジェミニ)
対話・相談・アイデア出し
「メールの文案を考えて」「この資料を要約して」といった単発の依頼に答えるのが得意です。しかし、チャットが終わればタスクは終了します。
Google Workspace Studio(スタジオ)
業務フローの自動化・実行
「メールが来たら→内容を判断して→返信する」といった連続した作業(ワークフロー)をエージェントに覚え込ませ、自動で実行させることができます。一度作れば、繰り返し何度でも動きます。
Looker Studio(ルッカースタジオ)
データの可視化
スプレッドシートなどのデータを読み込み、見やすいグラフや表(ダッシュボード)を作成するツールです。自動化やAIエージェント作成とは目的が異なります。
つまり、「Geminiは相談相手」「Looker Studioはグラフ作成」「Workspace Studioは業務実行ロボットの作成」と覚えておけば間違いありません。
旧「Google Workspace Flows」からの進化と現状
実はこのツール、以前は「Google Workspace Flows」などと呼ばれ、一部の技術者に向けた機能として提供されていました。しかし、より多くのビジネスパーソンが使えるように大幅に進化し、「Studio」として生まれ変わりました。
以前は少し専門的な知識が必要でしたが、現在のStudioはAIの性能が飛躍的に向上したため、曖昧な指示でも意図を汲み取ってくれるようになりました。「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたいけれど、社内にエンジニアがいない」という企業にとって、まさに救世主となるツールに進化したのです。
Google Workspace Studioでできることは?3つの導入メリット

では、具体的にGoogle Workspace Studioを使うと、私たちの仕事はどう変わるのでしょうか? ここでは、導入によって得られる3つの大きなメリットを解説します。
GmailやGoogleドライブ、カレンダーとのシームレスな連携
最大の強みは、私たちが普段使っているGoogle Workspaceアプリ(Gmail、ドライブ、カレンダー、ドキュメント、スプレッドシートなど)同士を、驚くほどスムーズに連携できる点です。
他社の自動化ツール(ZapierやMakeなど)を使う場合、Googleのアカウントと接続する設定が面倒だったり、アプリ間でデータを渡す際にエラーが起きたりすることがあります。しかし、Google Workspace Studioは同じGoogle純正のツールなので、親和性が抜群です。
- Gmailで受信した内容を、そのままドキュメントに書き出す
- カレンダーの予定を見て、チャット(Google Chat)に通知を送る
- ドライブにファイルが保存されたら、スプレッドシートを更新する
これらが、複雑な接続設定なしで、最初から「つながっている」状態で利用できます。「Googleアプリを使い倒している」という企業や個人ほど、その恩恵を強く感じられるはずです。
定型業務の自動化による大幅な工数削減の可能性
単に「データをつなぐ」だけではありません。AI(Gemini)の頭脳が組み込まれているため、「人間の判断」が必要だったプロセスごと自動化できます。
これまでの自動化ツールは、「Aが起きたらBをする」という単純なルールしか設定できませんでした。
しかし、Studioで作るAIエージェントは、以下のような高度な処理が可能です。
顧客からのメール本文をAIが読み込む。
「これはクレームか? 質問か? 注文か?」を文脈から判断する。
クレームなら上司に即通知、注文なら在庫管理シートへ記入、といった具合に条件分岐して処理を行う。
これまで「人間にしかできない」と思われていた判断業務をAIに任せられるため、チーム全体の工数を大きく削減できる可能性があり、空いた時間をクリエイティブな仕事に充てることができるようになります。
高度なセキュリティと社内データ活用の安全性
企業でAIを使う際に最も心配なのが、「情報漏洩」や「データの二次利用」です。「無料の生成AIツールに入力した社外秘データが、AIの学習に使われて他社に流出してしまうのではないか?」という懸念は尽きません。
Google Workspace Studioは、企業向けの有料プラン(Business/Enterprise)の一部として提供されるため、入力したデータや作成したエージェントの情報が、GoogleのAIモデルの学習に使われることは一切ありません。
また、Google Workspaceが持つ強固なセキュリティ基盤(エンタープライズレベルの防御)に守られています。誰がどのエージェントを使ったかというログ管理や、アクセス権限の設定も細かく行えるため、企業として安心して「社内データの活用」に踏み切ることができます。
Google Workspace Studioの活用事例!日常業務はどう変わる?

機能やメリットは理解できても、「自分の仕事でどう使うの?」というイメージが湧きにくいかもしれません。ここでは、明日から使える具体的な活用事例を3つご紹介します。
【事例1】カスタマーサポートの一次対応を自動化
毎日大量に届く「お問い合わせメール」。その対応に追われていませんか?
Before
担当者が一件ずつメールを開封し、内容を読んで緊急度を判断。「よくある質問」なら定型文をコピペして返信し、複雑な案件なら担当者へ転送する。
After(AIエージェント活用)
- Gmailにメールが届くと、エージェントが即座に内容を解析。
- AIが「緊急度:高」「カテゴリ:製品トラブル」などとタグ付け。
- 簡単な質問であれば、マニュアル(Drive内のドキュメント)を参照して返信案の下書きを作成し、担当者に「これで送っていいですか?」と確認を求める。
- 複雑なクレームなら、要約をつけてSlackやGoogle Chatでマネージャーに即時通知。
担当者は「ゼロからメールを書く」作業から解放され、「AIが作った下書きを確認して送信ボタンを押すだけ」になります。
【事例2】プロジェクト管理と進捗確認の効率化
週に一度の進捗確認会議のために、メンバー全員に「進捗どうですか?」と聞いて回るのは大変な労力です。
Before
マネージャーが一人ひとりにチャットで確認し、スプレッドシートに入力してもらい、未入力の人に再度リマインド(催促)を送る。
After(AIエージェント活用)
- エージェントがGoogleスプレッドシートの「期限」列を毎日チェック。
- 期限が迫っているタスクや、ステータスが「未完了」の担当者を検知。
- 自動的にGoogle Chatで「〇〇さん、このタスクの状況はいかがですか?」とメンション付きで連絡。
- 担当者がチャットで「完了しました」と返すと、エージェントがスプレッドシートのステータスを「完了」に書き換える。
- 週末にはチーム全体の進捗率を計算し、マネージャーにレポートとしてメール送信。
まるで「進捗管理専門の秘書」がいるかのように、プロジェクトがスムーズに進むようになります。
【事例3】ドキュメント作成と要約の自動アシスト
会議が終わった後の「議事録作成」や「ToDo整理」。記憶が新しいうちにやりたいですが、つい後回しになりがちです。
Before
録画を見直しながら手作業で文字起こしをし、重要事項をまとめ、次のタスクをカレンダーに登録する。1時間の会議で、事後処理に30分以上かかることも。
After(AIエージェント活用)
- Google Meetの録画データがドライブに保存されると、エージェントが自動起動。
- 動画内の音声を解析し、要点をまとめた議事録ドキュメントを自動作成。
- 会話の中から「誰が」「いつまでに」「何をするか」というToDo(タスク)を抽出。
- 関係者のGoogleカレンダーやToDoリストにタスクを自動登録。
会議が終わってお茶を飲んでいる間に、議事録の下書きとタスク整理が完了している状態を実現できます。
Google Workspace Studioの使い方と始め方【初心者向け3ステップ】

それでは、実際にGoogle Workspace Studioを使ってAIエージェントを作る手順を見ていきましょう。難しく聞こえるかもしれませんが、やることはシンプルです。
ステップ1|管理画面へのアクセスと初期設定
まずは、Google Workspaceの画面からStudioにアクセスします。
(※組織の管理者が機能を有効にしている必要があります)
- ブラウザでGoogle Workspaceにログインします。
- 右上のアプリランチャー(点の集まり)またはサイドバーから「Gemini」または「Studio」のアイコンを探してクリックします。
- 「新しいエージェントを作成(Create new agent)」というボタンが表示されるので、ここからスタートします。
画面は非常にシンプルで、検索窓のような入力欄と、チャット画面が中心になっています。「開発ツール」のような黒い画面やコード入力画面は出てきませんのでご安心ください。
ステップ2|自然言語でのプロンプト入力(指示のコツ)
ここが最も重要なパートです。「どんなエージェントを作りたいか」を日本語で入力します。
ただし、「業務を効率化して」といった曖昧な指示では、AIも何を作ればいいか分かりません。「いつ(トリガー)」「何を(入力)」「どうする(アクション)」を具体的に伝えるのがコツです。
【失敗しやすい曖昧なプロンプト例】
「メールの返信を自動化するツールを作って」
(これだと、どのメールに、どう返信するかが分かりません)
【成功する具体的なプロンプト例】
「Gmailに『請求書』という件名のメールが届いたら(トリガー)、
そのメールの添付ファイルをGoogleドライブの『2025年請求書フォルダ』に保存し(アクション1)、
送信元のアドレスと受信日時をスプレッドシートに追記して(アクション2)、
最後に『請求書を受領しました』という返信メールの下書きを作成してください(アクション3)。」
このように入力すると、Studioが自動的に「Gmailコネクタ」や「Driveコネクタ」を組み合わせ、処理の流れ(フロー図)を画面上に生成してくれます。もし間違っていても、「返信は下書きじゃなくて、そのまま送信して」とチャットで修正を指示すれば、すぐに直してくれます。
ステップ3|動作テストと社内への公開(デプロイ)
エージェントができあがったら、いきなり本番で使う前にテストを行います。
画面上の「Run(実行)」ボタンを押し、実際に自分のメールアドレス宛にテストメールを送ってみるなどして、意図通りに動くか確認します。
AIの判断が間違っていたり、動きがおかしい箇所があれば、チャットで指示して修正します。
問題なければ「公開」ボタンを押します。これで、自分だけでなくチームメンバーにもエージェントを共有できるようになります。
最初は小さな業務(自分宛ての通知など)から始めて、徐々にチーム全体に関わる業務へと範囲を広げていくのが、失敗しない導入のコツです。
Google Workspace Studioの料金プランと利用条件
最後に、気になる「お金」の話です。「Google Workspace Studio」という単体の商品は販売されておらず、Google Workspaceのアドオン(追加機能)として利用するのが一般的です。
利用に必要なGoogle Workspaceのエディション
まず前提として、土台となるGoogle Workspaceの契約が必要です。無料の個人アカウント(@gmail.com)では、現時点ではフル機能を利用することは難しい場合があります。
- Google Workspace Business Standard
- Google Workspace Business Plus
- Google Workspace Enterprise 各種
これらのビジネス向けプランを契約している企業が対象となります。
Gemini Business / Enterprise アドオンの費用
Google Workspace Studioを利用するには、上記の基本プランに加え、「Gemini for Google Workspace」というアドオン契約が必要になるケースがほとんどです。このアドオンの中に、Gemini(チャット)やStudio(エージェント作成)の機能が含まれています。
【主なアドオン料金(目安)】
| プラン名 | 月額料金(1ユーザーあたり) | 特徴 |
| Gemini Business | 約 ¥3,000前後($20) | 一般的なビジネス利用向け。月間の利用回数に制限がある場合がある。 |
| Gemini Enterprise | 約 ¥4,500前後($30) | ヘビーユーザー向け。利用制限が少なく、高度な会議機能なども含まれる。 |
※本記事に記載の料金は執筆時点での概算目安です。最新かつ正確な情報は、必ずGoogle Workspaceの公式サイトまたは正規代理店にてご確認ください。
「全員分契約するのは高い…」と感じる場合は、まずはDX推進担当者やチームリーダーなど、「エージェントを作る人」の分だけ契約し、効果を検証してから全社展開するというスモールスタートもおすすめです。
Google Workspace Studioで業務効率化を始めよう(まとめ)
今回の記事のポイントをまとめます。
- Google Workspace Studioとは:日本語の指示だけで、業務を自動化する「AIエージェント」を作れるノーコードツール。
- 最大のメリット:GmailやDriveなどのGoogleアプリ同士をスムーズに連携し、複雑な判断業務まで自動化できる。
- 安全性:入力データは学習に使われず、企業レベルのセキュリティで守られている。
- 始め方:特別なソフトは不要。「いつ、何を、どうする」をチャットで伝えるだけで作成可能。
- 料金:Google Workspaceの契約に加え、「Gemini」アドオン(月額3,000円程度〜)の導入が一般的。
「AIで業務効率化」と聞くと、遠い未来の話や大企業だけの話に聞こえるかもしれません。しかし、Google Workspace Studioの登場によって、「誰もが自分の手で、面倒な仕事をロボットに任せられる時代」がすでに到来しています。
Next Step:
まずは、自社のGoogle Workspace管理者に「Geminiのアドオンは利用可能か?」「トライアルはできるか?」を確認してみましょう。
もしあなたが決裁権をお持ちなら、まずは1ライセンスだけ契約し、ご自身のメール返信業務を自動化することから始めてみてください。その便利さを体感すれば、きっとチーム全体に広めたくなるはずです。
