
将来の住み替えのために、ご自宅がいくらで売れるのか知りたいと思っても、初めての不動産査定は何から始めれば良いか分からず不安ですよね。
この記事では、そんな初心者の方に向けて、不動産査定の基礎知識から、手軽な「机上査定」と正確な「訪問査定」の具体的な違い、それぞれのメリット・デメリットまで丁寧に解説します。「査定後のしつこい営業が心配」「まだ売るか未定なのに頼んでいいの?」といった、よくある疑問にもお答えしますのでご安心ください。
この記事を読み終える頃には、査定への漠然とした不安は解消され、ご自身の状況に合った最適な方法が明確になります。そして、納得のいく価格で売却するための、賢い第一歩を自信を持って踏み出せるようになっているでしょう。
そもそも不動産査定とは?押さえておきたい3つの基礎知識

「不動産査定」という言葉は聞いたことがあっても、その中身は意外と知らないもの。まずは、査定の目的や基本的な仕組みを理解して、漠然とした不安を解消しましょう。ここを押さえるだけで、不動産会社とのやり取りもスムーズになります。
なぜ不動産査定が必要?売却計画の第一歩となる理由
不動産査定が必要な理由は、大きく分けて2つあります。
不動産は一つとして同じものがないため、定価が存在しません。周辺の相場や物件の状態をプロの目で評価してもらうことで、「このくらいの価格なら売れるだろう」という客観的な目安を知ることができます。この目安がなければ、高すぎて全く売れなかったり、安すぎて損をしてしまったりする可能性があります。
「家を売ったお金を、新しい家の購入費用や老後の資金に充てたい」と考える方は多いでしょう。査定によって売却価格の目安が分かれば、次のライフプランに向けた具体的な資金計画を立てることができます。不動産査定は、あなたの未来設計図を描くための第一歩なのです。
不動産査定は基本的に無料!その仕組みと背景を解説
「なぜ無料で査定してくれるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、心配は無用です。不動産会社が無料で行う査定は、ボランティアではなく、将来のビジネスチャンスへの「投資」だからです。
不動産会社は、物件の売買が成立した際に売主様と買主様からいただく「仲介手数料」が主な収益源です。無料で査定を行い、お客様との信頼関係を築くことで、実際に売却する際に自社を選んでもらう(媒介契約を結んでもらう)ことを目的としています。つまり、査定は「お客様へのサービス兼営業活動の一環」。ですから、あなたは気兼ねなく無料の不動産査定サービスを利用して良いのです。
「査定」と「鑑定」は全くの別物!混同しやすい言葉の違いとは?
不動産査定と似た言葉に「不動産鑑定」があります。この2つは目的も費用も全く異なるので、違いを理解しておきましょう。
項目 | 不動産査定 | 不動産鑑定 |
---|---|---|
目的 | 不動産の売却を検討するための価格の目安を知る | 裁判や相続などで使用する公的な価格証明 |
実施者 | 不動産会社の担当者 | 不動産鑑定士(国家資格) |
費用 | 無料が一般的 | 有料(数十万円かかることも) |
信頼性 | あくまで目安(法的効力なし) | 公的な証明力を持つ |
一般的な不動産の売却を検討している段階であれば、費用のかかる「鑑定」は必要ありません。まずは無料の「不動産査定」で価格の目安を知ることから始めましょう。
【徹底比較】2つの不動産査定方法|机上査定と訪問査定を完全理解

不動産査定には、大きく分けて「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。あなたの状況や目的に合わせて適切な方法を選ぶことが、後悔しないための重要なポイントです。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
まずはネットで完結!手軽な「机上査定(簡易査定)」とは
机上査定とは、物件の所在地、面積、築年数などのデータと、周辺の類似物件の取引事例などをもとに、現地を見ずに算出する査定方法です。インターネットで気軽に申し込めるのが最大の特徴です。
- とにかく手軽でスピーディー(最短数分〜数日)
- 住所や名前を明かさずに「匿名」で利用できるサービスもある
- 不動産会社との対面でのやり取りが不要
- あくまで「概算価格」であり、精度は低い
- 日当たりやリフォーム状況、室内の綺麗さなどの個別事情が反映されない
- 「まずはざっくりとした相場だけ知りたい」
- 「まだ売却を決めていないので、気軽に試したい」
- 「しつこい営業を受けたくない」
より正確な価格が知りたいなら「訪問査定(実査定)」
訪問査定とは、不動産会社の担当者が実際に現地を訪問し、物件の状態を細かくチェックして算出する査定方法です。より現実的な売却価格を知ることができます。
- 査定価格の精度が非常に高い
- リフォーム状況や設備のグレード、日当たりなど、物件の良い点を直接アピールできる
- 具体的な売却方法やスケジュールについて直接相談できる
- 査定に時間がかかる(訪問に1〜2時間、査定書作成に数日)
- 担当者と対面でやり取りする必要があり、日程調整の手間がかかる
- 「売却の意思が固まっており、具体的な価格を知りたい」
- 「住み替えの計画があり、正確な資金計画が必要」
- 「売却に関する相談も併せて行いたい」
一目でわかる!机上査定と訪問査定のメリット・デメリット比較表
項目 | 机上査定(簡易査定) | 訪問査定(実査定) |
---|---|---|
精度 | △(概算) | ◎(正確) |
スピード | ◎(早い) | △(時間がかかる) |
手間 | ◎(少ない・手軽) | △(多い・対面) |
反映される情報 | 物件データ、周辺相場 | 物件データ、周辺相場、個別要因(日当たり、眺望、室内状況など) |
おすすめな人 | まずは相場を知りたい人 | 具体的に売却を検討している人 |
【チャートで診断】今のあなたに最適な不動産査定はどっち?
「自分にはどちらが合っているんだろう?」と迷ったら、このチャートで診断してみましょう!
Q1. 不動産の売却を具体的に決めていますか?
- YES → Q2へ
- NO → 【机上査定】がおすすめ! まずは気軽に相場を把握しましょう。
Q2. 正確な資金計画を立てる必要がありますか?
- YES → 【訪問査定】がおすすめ! 精度の高い価格で計画を立てましょう。
- NO → Q3へ
Q3. 不動産会社と直接話して、相談もしたいですか?
- YES → 【訪問査定】がおすすめ! 専門家のアドバイスを受けましょう。
- NO → 【机上査定】がおすすめ! まずは情報収集に徹しましょう。
初めてでも安心!不動産査定を依頼する簡単な4ステップ

査定方法が決まったら、いよいよ依頼のステップに進みます。難しく考える必要はありません。ここでは、一般的な不動産査定の流れを4つのステップで分かりやすく解説します。
STEP1『査定を依頼する不動産会社を探す・選ぶ』
査定を依頼する方法は主に2つです。
- 不動産一括査定サイトを利用する
一度の入力で複数の不動産会社に査定を依頼できる便利なサービスです。各社の査定額を比較しやすく、手間が省けるため、初めての方には特におすすめです。 - 不動産会社のホームページから直接申し込む
気になる不動産会社が決まっている場合は、その会社のホームページから直接申し込むこともできます。
STEP2『物件の情報を入力して査定を申し込む』
査定サイトや不動産会社のフォームに、物件情報を入力します。主な入力項目は以下の通りです。
- 物件種別(マンション、一戸建て、土地など)
- 所在地(住所)
- 面積(専有面積、土地面積など)
- 築年数
- 間取り
これらの情報が正確であるほど、査定の精度も上がります。
STEP3『査定結果を受け取る(査定書のここをチェック!)』
数日後、不動産会社から査定結果がメールや電話で届きます。この時、提示された「査定価格」の金額だけを見るのはNGです。
必ず「なぜその価格になったのか」という査定の根拠を確認しましょう。信頼できる会社は、「近隣のこの物件が〇〇円で売れたから」「この設備がプラス評価になったから」といった具体的な理由が書かれた「査定書(査定報告書)」を提出してくれます。この根拠こそが、会社の信頼性を判断する重要な材料になります。
STEP4『内容を比較検討し、媒介契約へ(※売却を決めた場合)』
複数の査定結果が出揃ったら、査定額とその根拠、そして担当者の対応などをじっくり比較検討します。査定を依頼したからといって、その会社と契約しなければならない義務は一切ありません。
最も信頼できると感じた会社が見つかり、売却の意思が固まったら、その会社と不動産の売却活動を正式に依頼する「媒介契約」を結ぶことになります。
失敗しない不動産査定のために|信頼できる会社選びと3つの注意点

不動産査定は、どの会社に依頼するかで結果が大きく変わることがあります。あなたの大切な資産の価値を正しく判断してもらうために、会社選びのポイントと注意点を押さえておきましょう。
1社だけはNG!複数社に不動産査定を依頼すべき本当の理由
手間を惜しんで1社だけに査定を依頼するのは、絶対に避けましょう。必ず3社以上の複数社に依頼することをおすすめします。その理由は3つあります。
1社だけでは、提示された価格が高いのか安いのか分かりません。複数社の価格を比較することで、ご自身の物件の適正な相場が見えてきます。
不動産売却は、担当者と二人三脚で進める長い道のりです。親身に相談に乗ってくれるか、質問に的確に答えてくれるかなど、信頼できるパートナーを見つける絶好の機会になります。
査定書には、各社の売却戦略(どんな広告を出すか、どんな層にアピールするかなど)が書かれていることもあります。あなたの物件を最も高く、早く売ってくれそうな会社を選ぶことができます。
大手と地元密着型、それぞれの不動産会社の特徴と選び方のコツ
不動産会社は大きく「大手」と「地元密着型」に分けられます。どちらが良い・悪いではなく、それぞれに特徴があります。
大手不動産会社 | 地元密着型の不動産会社 | |
---|---|---|
強み | ・豊富な取引実績とデータ ・全国規模の広告力、顧客網 ・教育された質の高い営業 | ・その地域ならではの情報に精通 ・地元の購入希望者を抱えている ・フットワークが軽く柔軟な対応 |
弱み | ・営業ノルマなどによる機械的な対応になることも | ・広告力や集客力が大手には劣る ・会社によってサービスや担当者の質にばらつき |
都市部の人気エリアにあるマンションなどは大手が、地域性の高い物件や、きめ細やかな対応を求めるなら地元密着型が向いているなど、物件に合わせて使い分けるのが賢い選び方です。
要注意!高すぎる査定額を提示する会社には裏がある?
複数社から査定結果をもらうと、1社だけ突出して高い金額を提示してくる会社があるかもしれません。一見魅力的に見えますが、安易に飛びつくのは危険です。
これは、契約を取りたいがために、売れる見込みのない高い査定額を提示する「釣り価格」である可能性があります。そうした会社と契約してしまうと、結局売れずに何度も値下げを繰り返すことになり、時間も労力も無駄にしてしまう恐れがあります。
大切なのは、価格の高さだけでなく、「なぜその価格なのか」という明確な根拠です。高い査定額には、必ずその理由を詳しく問い質し、納得できる説明があるかどうかを見極めましょう。
初めての不動産査定でよくある疑問をすべて解消【Q&A】
最後に、不動産査定を検討する際に多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。ここで最後の不安を解消して、スッキリした気持ちで第一歩を踏み出しましょう。
Q. 査定をしたら、必ず売らないといけませんか?
A. いいえ、その必要は全くありません。
査定はあくまで価格の目安を知るためのものです。査定結果を見てから、売却するかどうかをじっくり検討して問題ありません。売却しないという決断をしても、費用を請求されることはないのでご安心ください。
Q. 査定後のしつこい営業電話が不安です…
A. 事前に対策が可能です。
一括査定サイトの申し込みフォームには、要望を伝えられる「備考欄」が設けられていることがほとんどです。そこに「連絡はメールを希望します」と一言書き添えるだけで、不要な電話を大幅に減らすことができます。また、評判の良い大手の一括査定サイトは、悪質な会社を排除する仕組みを整えているため、安心して利用できます。
Q. 住宅ローンが残っていても不動産査定はできますか?
A. はい、全く問題なく可能です。
実際に、多くの方が住宅ローン返済中に家を売却しています。売却して得たお金でローンを完済できれば問題ありません。査定の際に「ローン残高が〇〇円あります」と伝えておくと、売却後の手残り金額のシミュレーションなど、より具体的なアドバイスをもらえます。
Q. 準備すべき書類は?何もないと査定できませんか?
A. 書類がなくても査定は可能です。
手ぶらの状態でも査定は依頼できますが、以下の書類があると、よりスムーズで正確な査定が期待できます。
- 登記済権利証または登記識別情報通知書(物件の所有者や面積を確認)
- 間取り図、測量図など
- 固定資産税の納税通知書
もし手元にあれば、準備しておくと良いでしょう。
【まとめ】
この記事では、初めて不動産査定を検討する方に向けて、基礎知識から査定方法の違い、会社選びの注意点までを詳しく解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 不動産査定は、売却の第一歩となる重要な情報収集の手段。
- 査定には手軽な「机上査定」と、正確な「訪問査定」がある。
- まずは「机上査定」で相場を把握し、売却の意思が固まったら「訪問査定」に進むのが王道。
- 必ず複数社に依頼して、査定額だけでなく「根拠」と「担当者」を比較することが成功のカギ。
- 査定をしても売却義務はなく、費用もかからないので、安心して利用できる。
不動産査定は、決して怖いものでも、面倒なものでもありません。あなたの大切な資産の価値を知る、ワクワクするスタートラインです。
まずは「匿名」でも利用できる机上査定から、気軽にあなたの家の価値を調べてみてはいかがでしょうか。この一歩が、きっとあなたの素晴らしい未来へと繋がっていくはずです。